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アフリカ大陸の中でも,東・南部アフリカは,「高いアフリカ」といわれていて,平均の高度は1000m程度である.これはグレートリフトバレーにそって地殻が上昇をつづけているためで,開け行く大陸の間にはいくつもの底の深い湖が分布している.このため東・南部アフリカでは海岸地帯からタンザニア・マラウイ国境付近の3000mの山地帯まで高度差が大きく,多様な生態環境がつくられている.
高度差があるばかりでなく,図にしめすように,地形が階段状で,ほぼ500mの間隔で平原が分布し,その境目がエスカープメントになっているのが特徴である.植生は下位から,アカシア林,ミオンボ林,山地林,山地草原となっており,その境界はそれぞれ500m,1800m,2500mとなっている.1番低い500mの平原は,タンザニア,モロゴロ付近に広がっており(1),ミオンボ林帯に属しているが,植民地時代からサイザル麻のプランテーションなどの開発が進み,現在ではブッシュになっている.更に内陸にはいると,イリンガ付近から1200mの平原が広がる.この地域も耕地化が進み,ミオンボ林はブッシュ化しているが,標高1800m以上は山地林になっている.(2).山地とはいうもののいったん山へ登れば起伏は小さく,頂上付近には平たい尾根が広がっている(3).典型的な山地林は標高2000m付近のジョンベ台地上にみられ(4),更に標高2500mにあがるとマラウイのニーカ高原において山地草原になる(5).写真にみられるように谷頭部には森林がはりついており,土壌・水分環境が植生に影響を与えているとみられる.
ミオンボ林が広範に発達しているのは,ザンビアの標高1200mの平原である(6).ミオンボ林とは,マメ科ジャケツイバラ科の数属が優先する落葉樹林で,樹高が最大でも20m程度の疎林である(7).この地では,伝統的にチテメネとよばれる焼畑がおこなわれており(8、9)現在でも重要な生業となっている.チテメネには地域によってバリエーションがあり(10),地域の人々の伝統の根強さを感じさせる.
タンザニア南部からザンビア北部にかけては多様な自然環境を巧みに利用した様々な在来農業が発達してきた.一例を示すとフィパマウンド(11),マテンゴピット(12),マスベ(13),テラス(14)などである.これらの多くでは伝統作物であるシコクビエが植えられてきたが,ニアサ湖のほとりでは,豊富な雨水と火山灰を栄養源として水田耕作も行なわれてきた(15).在来農法は,現代の現金経済の浸透によって,トウモロコシ栽培へと変わりつつある.しかし,これまでつちかわれてきた農民の環境利用の知恵は,生存戦略の要として将来も生きつづけるに違いない.
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