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アフリカの人為植生  藤岡 悠一郎

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 赤道付近の熱帯雨林、南北回帰線付近の砂漠、疎開林、灌木林など、アフリカ大陸には多種多様な植生が成立している。その分布を大陸スケールでみると、気温や降水量などの気候条件、標高や勾配などの地形条件が植生の分布を規定する主な要因であるようにみえる。そうした植生分布は広域植生図によって提示され、落葉/常緑などの樹木の性質や優占する樹種などによって各植生区が表現されてきた(図1)。
(参考:植生の凡例, 図1・図2共通
人為植生1 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1
 例えば、UNESCOのアフリカ大陸植生図(White, 1983)によると、赤道付近西部には濃い緑で示した熱帯雨林(rain forest)(地点A)が広がり、そこから南北高緯度にすすむとミオンボ林とよばれる亜熱帯疎開林(woodland)(地点D, 地点F)やモパネ林(Colophospermum mopane woodland)(地点C, 地点G)などが帯状に分布している様子が読みとれる。そして、乾燥気候が卓越する南北回帰線付近には黄色で示した灌木林(shrubland)(地点B, 地点H, 地点J)や赤で示した砂漠(desert)(地点I)が連なっている。また、東アフリカの大地溝帯や南部アフリカのドラケンスバーグ山脈などの標高の高い場所では高山植生(Altimontane vegetation)(地点E, 地点K)が成立し、地中海性気候である喜望峰周辺では、フィンボスあるいはCape Shrublandとよばれる、独特の植生帯が成立している(地点L)。

 このような広域植生帯を、より小さな空間スケールでみると、さらに多種多様な植生が見出される。こうした多様性が生じる背景には、より局所的な自然環境の差異が植物の生育に影響を及ぼしている点が挙げられるとともに、各地に暮らす人々の土地や植物の利用方法に差異が存在するという点が挙げられる。アフリカ大陸で暮らす人々の大部分は、アジアや南米など他の地域と同様に、昔から植物を生活のなかで様々な用途に利用してきた。その利用方法は地域特有の自然環境や人々の生活様式などに応じた地域差があり、同じ広域植生帯に位置する地域であっても差異が認められることが多い。そして、人々による植物や土地の利用方法の違いはそこに成立する植生景観の差異として顕在化している。すなわち、人為植生を比較することにより、住民と植物との関係性や生態環境における地域固有性や普遍性を浮き彫りにすることができると考えられる。ここでは、人間のある程度の関与のもとで成立してきた植生景観を人為植生とよび、アフリカでみられる多様な人為植生の一端を紹介したい(図2)。
人為植生2 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1
 ところで、1980年頃から先鋭化する地球環境問題への社会的な注視のなかで、アフリカなど低開発国に暮らす人々の活動が自然環境破壊の原因のひとつであると指摘されてきた。植生に関しては、過放牧や焼畑などが植生荒廃の一因とみなされ、そのような活動のもとで形成される人為植生は荒廃地としてみなされがちであった。しかしながら、アフリカの村落を訪れると、ナミビアのヤシやマルーラの林(地点⑨)やエチオピアのコーヒーの自生する森(地点①)、バオバブの散生する林(地点⑤)、のように、住民が長い年月をかけて育んできたとみられる植生が認められ、植物を持続的に使い続ける巧みな仕組みなどが見出される。また、マラウイのマツやユーカリの植林地(地点⑥地点⑦)、ウアパカの優占する二次林(地点③)、タンザニアのモリシマアカシア林(地点②)、などをみると、住民と植物との関係性やそのもとで成立する人為植生の多様性に気付かされる。こうした、アフリカの各地でみられる人為植生の多様性に注目し、その植生構造や成立背景などを検討していくことは、人間と植物とのよりよい付き合い方を考える一助になるのではないだろうか?

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