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【地図中および本文中の地点番号/記号をクリックすると、地点情報が表示されます】

人類の故郷としての氾濫原:その700万年の歴史  岡本 雅博,藤岡 悠一郎,稲井 啓之

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 この企画をはじめるきっかけとなったある考古学的学的発見がありました。2001年に中央アフリカのチャドで人類祖先の頭骨化石(サヘラントロ・チャデンシス:地点④)の発見です。いままでの人類の起源に関する定説は大きく塗りかえられました。すなわち人類の起源は700万年前まで遡ることとなったのです。
 サヘラントロプス・チャデンシス以外にも、オロリン・トゥゲネンシス:地点⑤、アルディピテクス・ラミドゥス:地点⑥、ルーシー:地点⑦(アウストラロピテクス・アファレンシス)、そしてアウストラロピテクス・アフリカヌス」:地点⑧をはじめとする多くの古人類もまた、低湿地帯もしくは氾濫原において発掘されています。 そして、時代をさらに先に進めると、アフリカ大陸に勃興した王国もまた、氾濫原の近くに多く存在しているのです。進化の上での重要な自然の要素であり、政治経済的にも重要な要素である氾濫原は、現在にいたるまで人類にとって重要な役割を担っているのではないかと思います。本企画では、アフリカの氾濫原を人類の故郷・生存の基盤としてとらえることを出発点とし、700万年前から現在にいたるまでの長大なタイムスパンをもって見ていきたいと思っています。アフリカにおける氾濫原と人類との関係について、1)古人類のいた時代、2)アフリカ緒王国の勃興、3)現代、の3つの時代に分けて、見ていきたいと思います。
人類祖先化石と氾濫原 8 7 6 5 4 3 2 1

  アフリカには、ナイル川やニジェール川といった大河流域をはじめとして、多くの氾濫原が分布し、その総面積は30万平方キロメートルにおよびます。氾濫原という生態環境は、人類の起源地であったばかりでなく、文明や古代王国の発祥の地でもあったのです。紀元前に栄えたエジプト王朝をはじめとし、西アフリカのソンガイ王国、コンゴ川上流域のルバ帝国、あるいはザンベジ川上流域のロジ王国などが展開したのも氾濫原なのです。アフリカの王国史に関する研究は数多くありますが、氾濫原という生態環境から王国の形成を提示するという視点はこれまでの研究には欠落していました。そこで、われわれは別のページをもうけてグーグルマップにアフリカの王国の分布を載せておきました。

・現在の氾濫原とその利用
 現在、アフリカの数多くの氾濫原では、地域住民による生態環境を利用したさまざまな生業形態をとって暮らしています。たとえば、我々のフィールドのナミビア北部のクラベイ・エトーシャ氾濫原:地点①,カメルーン北部のロゴーヌ川氾濫原:地点②、ザンビアのバロツェ氾濫原:地点③などでは、氾濫原という生態環境の特性をいかした環境に負荷をかけない持続的な生業がいまなお営まれています。その一方、アフリカの各国で定める国立公園や動物保護区には氾濫原が含まれることが多いですが、人間が野生動物に害を与える存在として扱われ、排除の対象ともなってきたという事実も存在します。また、湿地の「賢明な利用(ワイズ・ユース)」を目指す国際条約(ラムサール条約)が締結されるなど、氾濫原には世界的な注目が集められています。すなわち、氾濫原という生態環境から発せられる様々なメッセージは、ヒト-自然関係についてのあり方を再考するうえでも重要な意味をもっているのです。

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